あと1ポイントで勝利が見えた瞬間、動きに微妙なずれが生じる。
いま、手を伸ばせばそこにある勝利が、もどかしいほど届かない。
フルセット、40-15のマッチポイントから逆転されて、何度も敗けた大昔の自分の試合がよみがえる。
たかが学生の試合でも、そう。
ましてや、世界の舞台、オリンピック。
追う立場のほうが有利で強気。もはや失うものはない。
かたや、リードして、絶対的に有利なはずの側が、委縮する。
だから、大どんでん返しの勝利やまさかの敗退が、オリンピックという舞台では多発する。
だって、人間だもの。
サイボーグやロボットじゃなく。デリケートな「こころ」をもった生身の人間だもの。
だから、勝って涙するひとも、敗けて涙するひとも、いとおしい。