ちいさいころ、音に異常に敏感だった。
耳を澄まさないときこえないような音や、ほかの人には聞こえないような音。
寝るときに、それらは顕著に現れた。
たとえば、きーーーんというような、よく聴力試験できかされるようなかすかな音。
「きーーんといっててねられない~」と母に訴える。
でも母には聞こえない、多分。
かといって、大人になってから起こるような、自分の耳鳴りではない。
「ラジオの電波の音かなんかだから、大丈夫」などといわれ、
むりやり眠りにつこうと試みる。
あるときは、きゅっ、きゅっ、きゅっ、と、小さいが不気味な音が、夜になると聞こえる。
毎晩続いて、寝られない。
どうやら外からの音のようだ。
あまりにもねられないと私が訴えるので、ある晩、両親は二人して
音の原因を探りに行った。
そしたら、裏のおうちの、トイレの換気塔のちいさなファンが、
風でかすかにきゅっ、きゅっと鳴っていたそうだ。
大人になった今は、ていうか、なりすぎた今は、
そんな神経質さは持ち合わさなくなった。
でも、わたしの耳は、いろんな音を拾う。
遠く離れた誰かのかばんのなかでなっている携帯のバイブや。
同じフロアのだれかのお腹がなる音や。
近所の家でリセットされないまま鳴っている目覚ましアラームや。
はなれたところでのひそひそ話もきこえているかもよ。
気ぃつけなはれ。
(そのうち耳東京になりますから~)