「誰ですか!この絵の犯人はっ!」
小学生のとき、絵の先生が、壁に貼った絵のなかから、私の描いたポインセチアの水彩画を指さして言った。
私は、おずおず小さく手を上げた。
ポインセチアの花(葉っぱ?)部分が全然うまく描けなくて、なんども上から塗りなおしたりしているうちに、いろんな濃淡の赤がベットリした感じになり、もはや修復不可能となった大失敗作だった。
怒られるのだろうと思ったら「すばらしい!」と絶賛された。
ひっくり返るぐらい、びっくりした。
その男の先生は実際、髪をオールバックにした、「絵描き」そのものみたいな先生で、教え方や評価の仕方もちょっと変わっていた。
それでも自分にとっては、破り捨てて新たに描き直そうと思ったが時間がなくて、泣く泣く提出したまったくの駄作だったのだ。
そのとき子供心に、自分自身の評価と人の評価とはちがうんだ、ということを知った。
最近出したCD。
いろいろなひとから、いろんな感想をいただく。
たとえば、お気に入りの曲はこれ!って。
それらは、気に入らなくてボツにしようと一旦決めた曲であったり、気になるところだらけでぜったい聴きたくない曲であったりする。
そういう「自分的マイナス評価」の曲の名前がむしろ、あがる。
反対に、自分のお気に入りが、意外と人気がなかったり。
かくもちがうのだ。
あたりまえのことかもしれない。
でも大事なこと。
決め付けてはいけないんだ。
耳を傾けなければいけないんだ。
小学校のとき気づいたはずのこと、うん十年たった今、ふたたび気づかされる。
成長してないね。