“ココト、ココト、ココトの本来は、
ローライシというひとが、親に孝行しようとて、作りはじめたココト、
ココトのそのもとは、米にホニャララ、ニッキにチョウジ、
食べてみな、おいしいで! ホラまた売れた、うれしいな!
チャンチキチ、スケテンテーン!”
落語の一部だ。
小さいとき、キャンプや旅行にいくバスや電車の中で、父が私に伝授した。
わたしが毎回、ココトしよ!とせがんでいたのかもしれないが、こればっかり何度も何度も唱和していた。
旅行といったら、ココトだ。
多分、記憶のなかでだいぶ端折られ、実際とはちがうだろうけど、口に出すとリズムがいい。
ふっとしたときに、出てくる、これが。うん十年経った今でも。
刷り込み効果か。
でもココトってなに?
落語好きの人々に、「ココトって知ってる?」ときいても、「さあ・・・?」
なんでやろと思ってウェブ検索したら、ココトと思っていたのは「孝行糖」だった。
少し頭の弱い若者の与太郎が、親孝行が認められ、奉行所から褒美としてお金をもらったが、すぐに使ってしまうと心配した町の衆が、暮らしに困らないようにと頭を絞り、与太郎に飴売りをさせることにした。与太郎は派手な身なりで○○の一つおぼえの宣伝文句を囃しながらその飴「孝行糖」を売り歩くというストーリーだ。
私の頭には、冒頭の文句しかインプットされていないので、売れて嬉しすぎて、チャンチキチ、スケテンテーンと最後にこけるのかと勝手に解釈していたら、それは太鼓や鐘の囃子らしい。
(たしか父は、スケテンテーン!といいながら、よくひっくり返るふりをしていたけど)
ロウライシとは老莱子という唐の賢人で、年老いて正気定かでなくなった両親を前に、幼児のようふるまって両親に甘え、それで両親が回復したのだと。
落語をあまり聞く機会がないが、いちどちゃんと聞いてみたい。
ちなみに、飴の売れ行きが好調な与太郎は、水戸さまの屋敷前でも能天気に商売しようとして、門番の叱り声に調子を合わせて囃したため、棒でめった打ちされ、通りがかりの人に助けられ、
「どこをぶたれた?」
「ココォと、ココォと」
おあとがよろしいようで・・・