電車で扉の近くに座っていたら、ちょうど乗ってきた私の前に立った上品なご婦人と目があった。
まず顔のしわに目が行って、とっさに立ち上がって「どうぞ」と席を譲った。
そのご婦人は、心底ビックリした様子で、「えー!まあ、そんな、よろしいのにー」と、泣き笑いのような顔をしながらも、とにかく席に座った。
私は立ち上がったとき、彼女は背筋がのびていて姿勢がいいことにきづいた。
おそらく、わたしよりはるかに。
わたしはなんとなく、離れたところに反対側をむいて立った。
顔はしわだらけだったけど(きれいに化粧をしていたからよけい目立ったのかも)、もしかして、席をゆずられるほどのお年寄りではなかった?
もしかして、彼女にとってすごく失礼なこと、した?
席を譲られる、イコール「年寄りに見える」ってことだから、(あの表情から見て)もし彼女が生まれて初めて席を譲られたのだとしたら、彼女の人生にとってすごくショックな出来事だったかもしれない。
もし、わたしが近い将来、はじめてその経験をしたら、やはりそれは自分の人生にとって一大事に感じるとおもうから・・・
結局、もういちど彼女を見る勇気がなく、そのまま電車をおりた。