たのしいことは、すぐ終る。
それが、たのしければたのしいほど、あっという間に終る。
たのしいことが終ったときのさびしさ。それを本能的に知っていたのかどうか、私は子供のころ、遊園地で乗物に乗る前から、乗り終えたあと次に何に乗るかばかりに気をとられていた。「それに乗っているあいだじゅう、次どうしよ、次どうしよ、ばっかり言うてたよ」と父がいう。終ったときのさびしさを味わわないで済むよう、つねに次のたのしみを見つけておかなければ不安だったのだろう、子供心に。
そして、大人のいまも変わらない。
終ったときのさびしさを味わっている暇がないよう、終るまえから新たなことを探している私。
でもね、物事に終りがあることは、きっといいことなのだろう。
たのしいことが終ってしまうのはさびしいけど、苦しいことやつらいことにも、やっぱり確実に終りがやってくるということだから。